「腰が痛くて病院でレントゲンを撮ってもらったら”腰椎すべり症”と診断されました。」
このように腰椎すべり症にかかる人は意外に多く、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症に次いで3番目に多い腰の疾患です。
この疾患を治療する上で問題なのが、間違った治療をすると全く良くならなかったり、場合によっては症状が悪化したりするため厄介なんです。
もしあなたがそれについて、最善の策を考えているのなら、まず腰椎すべり症のことを知るところから始めてみては?
そこでこの記事では、この腰椎すべり症が一体どういう病気なのか?隠れた原因と治療法について説明していきます。
目次
腰椎すべり症とは?
まず腰椎というのは、腰の部分でブロック状に積み重なった背骨のことを言います。
正常の場合は、規則正しく綺麗に積み上がっているものです。
しかし、その腰椎のなかの一つが、ある原因でおなか側へスライドする(すべる)ことがあります。
それによって脊髄を圧迫し、腰痛症、坐骨神経痛などの症状を起こしてしまう病気を”腰椎すべり症”と言います。
この疾患は中年の女性に多く、腰椎のスライドがよく起こるのは、4番目、その次に5番目の腰椎に起きやすいと言われています。
椎間板ヘルニアと腰椎すべり症との違い
実は腰椎すべり症は、椎間板ヘルニアと症状が良く似ています。
症状に関してはどちらも腰痛と坐骨神経痛が起こります。
しかし細かく見ていくと、症状発生の原因や、症状の具体的な場所などが違います。
椎間板ヘルニア | 腰椎すべり症 | |
症状 | 腰痛、坐骨神経痛 | |
原因 | 椎間板の後方突出 | 腰椎の前方へのずれ |
しびれの箇所 | 片側に多く、両側はまれ | 両側に多い |
背骨のゆがみ | 脊柱が側方に曲がる(側弯) | 腰椎の前後のズレ |
好発部位 | 一番下の椎間板に多い | 第4腰椎に多く、次いで第5腰椎 |
椎間板ヘルニアは椎間板が壊れて斜め後ろ(神経根側)に突出するのに対し、腰椎すべり症は腰椎そのものが前方にスライドし、脊髄そのものを圧迫します。
よって治療の方法が大きく変わってしまうのです。
腰椎すべり症が発症しやすい原因
しかし腰椎の構造をよく見てみると、前後は靭帯で補強されているために通常では腰椎がすべるということはありません。
ではなぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか?
腰椎の角度
正常の腰椎は前弯といって前に湾曲しているのが正常です。
よって、下にある腰椎ほど前に傾く角度が大きくなる、つまり傾斜が付いているため、滑り台のように、前に滑りやすい構造になっているということが原因の一つとしてあります。
腰部の疲労
腰部は前後に大きく曲げ伸ばしができたり、横にひねったり、横に体を倒したりと、大きな動きができる部分になります。
そのために普通に生活をしていても、腰椎を酷使してしまうという傾向があります。
その中でも腰椎4番、腰椎5番というような下の腰椎は動きが特に大きくなるため、こららに大きな負担がかかってしまいます。
前後で固定をしている靭帯の力も次第に及ばなくなってくるのです。
腰椎の変形
腰椎に長期間負担がかかり続けると、それによって腰椎の関節が変形を起こしてしまいます。
変形を起こすと、骨同士の噛み合いがなくなってしまうために、前に滑る力を止めることができなくなります。
椎間板のへたり
椎間板は水分の豊富なコラーゲン繊維でできているのですが、その水分が次第に減ってしまうということが起きます。
中の水分が減るということは、座布団の綿(わた)がへたるようなもので、厚みや弾力がなくなってきます。
これも腰椎の支えを無くしてしまうことになり、腰椎すべり症の原因となります。
これらの内容をみて、そもそも腰椎は構造的に前方にすべりやすいとも言えます。
腰椎すべり症を発症やすい人に存在する2つの異常
ここまで腰椎すべり症は体の構造的に起きやすいことを理解していただけたと思います。
しかし実際にはこれに生活習慣上起こる体の問題が重なって腰椎すべり症が発症しているのです。
腰椎すべり症になる決定的な原因は以下の2つで、これがある人に起こりやすくなります。
骨盤(土台部分)のゆがみ
実は骨盤にゆがみがあると、腰椎すべり症になりやすいのです。
下の写真をみてください。
左は安定した土台の上に積み木が重なっている絵です。
そして右の写真は土台が傾いている上に積み木が重なっている絵ですが、この写真をみてどちらの積み木が安定していると思いますか?
そう、もちろん左の積み木ですよね?
右のほうは今にも崩れそうな状態でなんとかバランスを保っているという状態です。
土台が安定しているから、その上に積み木がまっすぐに積み上げられるのです。
逆に土台が安定していないと、その上の積み木は真っ直ぐに積んでいくことができないのです。
これはからだの中の骨盤と背骨の関係も同じです。
腰椎にとっては骨盤の安定がかなり重要だということです。
よって腰椎すべり症になる人の体を調べてみると、このように骨盤の傾きがきつい人が多く、それによって腰椎の並びがアンバランスになっているのが分かります。
骨盤と背骨に安定感がなく結果的に腰椎がずれてしまって腰椎すべり症を発症している可能性が高いと言えます。
椎間関節の異常
腰椎すべり症になりやすいもう一つの理由がこれです。
上の図を見てください。
これは、人がお辞儀をする(前屈をする)際に起こっている背骨の動きを横から見た模式図です。
正常な人の背骨の動きは【お辞儀姿勢1】ですが、腰椎すべり症の背骨の動きは【お辞儀姿勢2】になっていることが多いのです。
【お辞儀姿勢1】は背骨全体にまんべんなく動きがあり、滑らかなカーブを描いているように見えます。
それに対して【お辞儀姿勢2】は背骨の中の1つの関節だけしか動いておらず、他の関節は全く動いていないのが分かりますね?
腰が折れ曲がっているように見えます。
このようにお辞儀する際に1つの関節しか動かないというのは、その関節に大きな負担がかかってしまいますから関節疲労を簡単に起こしてしまいます。
その結果、関節がグラグラになってしまって腰椎すべり症を発症してしまうのです。
しかし一般の人が外から見た場合は、この動きの違いは分かりません。
それは人間の体が筋肉や脂肪、皮膚に覆われているためです。
背骨全体の滑らかな動きが失われてしまうと、腰椎には大きな負担がかかってしまいます。
腰椎すべり症が整体によって症状が軽くなる理由
このように腰椎すべり症はどうしても起こってしまう体の状態が根本にあり、それを元の状態に正すことが必要だと考えています。
よって整体でできることは、すべり症を直接元に戻すというよりも、元に戻るような周りの環境づくりをすることにあります。
先でお話ししたように、腰椎すべり症の根本的問題は、骨盤の安定と周りの背骨の動きが損なわれていることにあります。
よって骨盤のずれが改善され、背骨自体の動きが滑らかになっていくと、すべり症が起きていた腰椎は本来の位置におさまろうとします。
もしあなたが病院の検査で「腰椎すべり症」と診断されたことがあって、安静を勧められたり、痛み止めを服用している状況なら、現状を見直してみましょう。
あなたの未来に一筋の光が指すことでしょう!
コメント