今日は部活をしている中学生、高校生の親御さんに是非聞いてもらいたいお話をする。
現在部活をしている息子さん、娘さんで「腰が痛い」と言ってはいないだろうか?
このような10代の学生の腰痛は、対処方法を間違えると、その後の将来を左右しかねない重大な事態になりかねない。
「あの時、親としてしっかり対処しておけば・・・」
そうなる前に、知っておいていただきたい内容である。
実は中学生や高校生といった成長期の腰痛はとても厄介で、練習を続けるか否か、また練習を休ませた後の再開のタイミングには非常に慎重にならなくてはいけない。
今回は中学生や高校生に起こりやすい腰痛について、当院であった実際のケースについてシェアする。
ある高校生の野球部員の男の子が「腰が痛い」と言い出し、病院での詳しい検査の結果「腰椎分離症」と診断された。
その後当整体院に来院され、実際に行った施術とその後の経過についてのお話しだ。
ぜひ最後まで目を通してほしい。
患者
17歳男性(高校二年生)野球部のピッチャー
問診
1.3ヶ月前より野球の練習中(部活中)に腰が痛いと訴えて以来、そこから痛みが続いている。
2.軽いキャッチボールはできるが、投球練習で腰の捻りが強くなると痛みが出る。
3.またバッティング練習でのスイング時にも痛みがあり、思い切ってバットを振れない。
4.病院では「腰椎分離症」と診断された。
5.無理をすると悪化をする不安があったので、現在は部員とは別メニューで主にランニングなどを行なっている。
6.それでも通常練習に戻ろうとすると痛みが再発するため当整体院に来院した。
所見
1.立った姿勢で背骨の弯曲を見ると少し反り腰気味の姿勢に見える。
2.患者に腰の動作(ひねり、前屈、後屈)で痛みの再現をしてもらったところ、ひねり動作と後ろに反らした時に腰の下あたりに痛みが発生。
4.前屈動作では腰の痛みは出なかった。
5.腰回りの柔軟性を見たが比較的柔らかく、全体的な筋肉の緊張はなさそうだった。
検査
1.患者にうつ伏せになってもらって背骨を上から順に押さえていくと、腰椎のある部分で強い痛みを訴えた。
2.更に骨盤の形や動きを検査すると骨盤にねじれ、そして股関節にズレが見つかった。
施術
1.痛みが出た腰椎は触らず、その上の背骨と骨盤、そして股関節の調整を行い15分ほどで施術が終了した。
2.患者に先ほど行った腰のひねりと後屈の動きを再現してもらったところ、当初の痛みの強さが10とするとひねりでは半分ぐらいまで、後屈では6割まで痛みの強さが減っていた。(患者本人の表現によるもの)
3.2回目以降の施術も痛みがある箇所の施術は行わず、普段の痛みの度合いを聞きながら定期的に骨盤周りの可動域チェックと調整を行った。
4.同時に自宅での腹横筋トレーニングも実施してもらったが、それでも通常の練習復帰までに実に約3ヶ月を要した。
原因
このお子さんは野球の練習によって腰椎分離症を起こしてしまっていた。
腰椎分離症とはいわゆる「腰椎の疲労骨折」のことだ。
野球による過度なひねりや伸展動作によって腰椎下部に圧力が集中し、金属疲労のように腰椎の一部が骨折してしまった可能性がある。
今回、この高校生になぜ腰椎分離症が起こってしまったのか?
これが起こった原因は2つ考えられる。
一つ目は骨盤、股関節が固くなったことで、体幹のひねりや腰を反る際に腰椎に力が集中したこと。
二つ目はピッチャーの投球動作で、腰のひねりを反復動作として何度もしてしまったことが考えられる。
この場合の対処法はまずは安静である。
患部に炎症が起こっている可能性があるからだ。
この状況で無理して練習を再開すると、予後は更に悪くなる。
よって痛みが出た直後で練習を別メニューに切り替えて行なっていたことは正解だった。
もうひとつ大切なことがある。
これを行わないと練習を再開した時にまた同じような腰の痛みが再発し、いつまで経っても症状が治らなくなる。
股関節や骨盤が固ければ、腰に負荷をかけてしまうので、その改善が必要になる。
すなわちひねりや腰を反るという動作を、骨盤や股関節も動員して動かせるようにすることだ。
まとめ
腰椎分離症は野球を始め、水泳、バスケットボール、バレーボール、サッカーのような体幹の曲げ伸ばしや、ひねり動作を頻繁にするスポーツに多く起こる。
その理由は体幹を反らしたりひねったりする動作を、主に腰椎を使って行うために、そこに負荷が集中してオーバーワークを起こしてしまうからだ。
股関節などが固い学生は、ほぼ腰椎だけでその動作を行うことになり、動きを何度もする反復動作では更に一ヶ所に負担がかかる。
これによって腰椎分離症(腰の疲労骨折)が発症しやすくなるのだ。
もし発症した場合、絶対にやってはいけないことは、腰痛を我慢してその後も同じ練習を続けることである。
将来の選手生命に関わってしまうので絶対に無理をしないようにしてほしい。
しかし安静と言っても”家で寝ていろ”というわけではなく、「腰椎に負担のかかる練習メニューを避ける」というふうにすれば良い。
この時期は我慢して2ヶ月から3ヶ月の期間、通常の練習メニューには戻らないほうが良いだろう。
このように腰椎分離症になってしまうと一定期間練習や試合に出れなくなってしまうため、できれば普段から股関節の柔軟性をキープするなどの予防策を講じてほしい。
でも万が一腰椎分離症が起こってしまった場合は、初期の対応がとても大事になるので、このことをよく理解してお子様のケアの参考にしてほしい。
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